漬鮪魚
【讀音】づけ鮪魚
【英文名】Zuke Tuna (Soy-Marinated Tuna)
漬け鮪魚(ヅケ)とは、鮪魚の赤身を醤油ベースの調味液に漬け込んで仕上げる江戸前壽司の伝統的なネタのことを指す。冷蔵技術が存在しなかった時代に鮮度を維持するための工夫として生み出された手法であり、握り壽司の原点ともいえる存在だ。
江戸時代中期に醤油が普及すると、鮮度の落ちやすい鮪魚の保存法として醤油漬けが考案された。天保年間(1830年代)には屋台の壽司店が鮪魚を湯引きしてから醤油に漬け、握り壽司として提供し大評判を得た。これを機に、江戸前壽司を象徴するネタとして定着するに至った。
現代の壽司店における調理スタイルは多岐にわたり、長時間漬けることで身をねっとりとした質感に整えるものや、切りつけた身を数分だけ浸す短時間ヅケ、湯霜処理を経てから漬け込む手法まで、各店独自の技術が存在する。醤油の旨味が鮪魚の赤身へと浸透し、生の刺身とは一線を画す凝縮された味わいが持ち味だ。
なお、脂肪分の多いトロ部位は醤油をはじいてしまう性質があるためヅケには不向きとされる。赤身ならではの仕事として、今日まで受け継がれている。

