鹽
【讀音】しお
【英文名】Salt
寿司職人が塩を振る瞬間には、素材の味を見極める眼力が試される。白身魚やイカのように淡白なネタへほんの少量を添えると、舌の上で甘みが一気に広がる効果がある。仕込みの場でも塩は要の存在で、「塩締め」と呼ぶ処理が魚の余分な水気や臭みを取り去りつつ、身にしなやかな弾力を生み出す。コハダやサバに代表される光り物では、塩加減と漬け込む長さに職人の力量が色濃く映る。
塩を構成する物質の大部分は塩化ナトリウムだ。岩塩がほぼ産出しない日本の風土にあって、海水を煮沸して結晶化させる固有の製法が脈々と受け継がれた。瀬戸内地方と能登半島が製塩の拠点として名高く、揚浜式·入浜式·流下式と技法の革新が積み重なった。イオン交換膜法は1970年代から本格的に普及が進み、その過程で副産物として生じるにがりは豆腐を固める凝固剤にも用途が広がった。
国が運営した専売制度は1997年に終わりを告げ、2002年の全面自由化を境に各地から個性豊かな海塩が次々と生まれた。寿司の現場においても、塩を産地·製法で吟味し使い分ける意識が浸透しつつある。


