溜醬油
【讀音】たまりしょうゆ
【英文名】Tamari Soy Sauce
たまり醤油は、原料のほぼ全量を大豆が占める醸造醤油の一形態だ。小麦の比率が極めて低いため、濃口醤油では実現できない深いうま味と色の濃さが特徴となる。味噌を醸造する過程で上部に溜まる液体が、このたまり醤油の出自にあたるとする見方が定説になっている。
「たまり」という語が史料に姿を見せる最も古い例は1603年刊行の『日葡辞書』であり、味噌から得られる調理液として記述されている。成立の経緯については複数の学説が存在するが、13世紀ごろ(鎌倉時代)に中国から持ち込まれた金山寺味噌を和歌山県湯浅周辺で醸造するなかで偶然に生まれた副産物だという伝承がよく知られている。南宋から帰国した僧侶·心地覚心が伝えた味噌製法がその端緒をなすという説もある。
江戸初期まで国内全域で主流の座を占めていた醤油はたまりであり、産地は近畿や讃岐周辺に集中していた。しかし人口増加に伴って需要が急拡大し、既存の産地だけでは供給をまかない切れなくなった。この状況を背景に、関東で濃口醤油が生み出されることになった。
寿司の世界では、刺身に添える醤油としてたまりが重宝される場面が多い。ネタ本来の風味を底上げする力があるとして、今もこの醤油を欠かせない道具とする職人が数多くいる。


