有明海
【よみ】ありあけかい
【English Name】Ariake Sea
福岡・佐賀・長崎・熊本の4県に囲まれた九州北西部の湾で、外洋との水交換が制限された閉鎖的な海域だ。総面積はおよそ1,700km²に達し、九州全体の湾のなかで最大の規模を誇る。
この海域の際立った特徴として、国内随一とも言われる干満差の大きさが挙げられる。湾奥の大浦地区(佐賀県太良町)では大潮時の平均潮差が約4.9mを記録し、これほど激しい潮位変動が日本最大規模の干潟を育んだ原動力とみられている。1994年に環境庁が実施した調査では干潟面積が約2万712haと記録され、全国の干潟面積のおよそ4割が一帯に集中する事実が浮かび上がった。
筑後川をはじめ多数の河川が流れ込む構造上、塩分濃度は季節ごとに大きく変動し、濁度の高い独自の水質が形成される。こうした環境条件が複合的に重なった結果、特異な生態系がこの地に定着した。ムツゴロウ・ワラスボ・エツ・タイラギ・アゲマキなど、大陸系遺存種と呼ばれる希少な魚介類がその代表格だ。かつてアジア大陸沿岸の干潟と地続きだった時代の名残を色濃く残す生物群であり、国内での分布が有明海周辺に限られるものも少なくない。
寿司との関わりも深く、コノシロ・クルマエビ・ガザミ(ワタリガニ)・海苔の原料となるアサクサノリなどの主要産地として欠かせない存在だ。独自の漁法や郷土食文化が根付いたこの地は、豊かな水産資源の供給地として寿司文化を底から支え続けている。


