イイダコ
【よみ】いいだこ
【English Name】Webfoot octopus
「飯蛸」と表記するイイダコは、東アジアの沿岸海域を広く住処とするタコの仲間で、成体の全長は30cmほどにとどまる小柄な種だ。和名の由来は、産卵シーズンを迎えたメスの体腔が卵でびっしりと満たされる様子が、炊きたての白飯を思わせることによる。外見的な特徴として、腕の根元近くに黄金色の眼状紋が2つ並んでおり、これが近縁種との識別に際して重要な手がかりとなる。
生息範囲は北海道南部から九州まで続く日本列島の沿岸部を核として、朝鮮半島の南岸や中国大陸の沿海部まで及ぶ。静穏な内湾奥部の砂泥底、概ね水深10mに満たない浅場が主要な棲息地だ。漁獲では蛸壺漁が広く用いられ、天然の貝殻や模造品が誘引具として機能する。弥生・古墳時代の遺跡において小型の蛸壺に相当する土器が発掘されていることを踏まえると、古くから食文化に根づいていた様子がうかがえる。
食材として際立つのは、弾力ある身質と卵が持つ凝縮した旨みだ。抱卵直前の個体は市場で高い評価を受け、流通の主流は体長10cm台の規格となっている。刺身・塩ゆで・酢味噌和え・おでん・たこめし・唐揚げと、幅広い料理法に対応する。韓国では「チュクミ」の名で親しまれ、炒め料理として食卓に頻繁に登場する。産地として瀬戸内海の知名度が高い一方、香川県の漁獲量は2002年の199トンから2022年にはわずか1.6トンへと激減しており、資源管理体制の整備が喫緊の課題となっている。


