かべす
【よみ】かべす
【English Name】Kabesu
「かべす」は、菓子(か)・弁当(べ)・鮨(す)の頭文字を組み合わせた造語で、江戸時代から大正期にかけて芝居小屋で用いられた。歌舞伎見物の際、芝居茶屋に立ち寄らず木戸口から直接入場した中等の客は、観劇中にこの三品だけを注文する習慣があったとされる。
こうした客は「かべすの客」と呼ばれ、上等の席の客と区別されていた。やがてこの語は質素な客やけちな客を揶揄する表現としても使われるようになった。歌舞伎『月梅薫朧夜』にも「カベスのお定まり」という表現が見られ、当時の芝居文化に根付いた言葉だったことがうかがえる。
劇場で生まれたこの語は、のちに花柳界の通語としても広まったとされる。江戸の芝居見物において鮨が菓子や弁当と並ぶ定番の食べ物であった事実は、当時すでに鮨が庶民の間食として広く親しまれていたことを示している。


