五目いなり寿司
【よみ】ごもくいなりずし
【English Name】Gomoku Inari Sushi
五目いなり寿司は、甘辛く煮含めた油揚げへ、さまざまな具材を合わせた酢飯を詰めて仕上げる寿司の仲間だ。白い酢飯だけを使う通常のいなり寿司と違い、五目いなりには椎茸・にんじん・ごま・れんこんなどを酢飯に混ぜ込む点が大きな特色といえる。
関西地方では、こうした具入りの稲荷寿司がスタンダードで、「五目稲荷」という名でも広く知られている。形も関東の俵型とは趣が異なり、油揚げを対角線で二等分して三角形に整えるスタイルが主流だ。
稲荷寿司の歴史は江戸時代後期にまでさかのぼる。天保末年(1844年頃)には江戸の屋台で油揚げに飯を詰めた寿司が売り歩かれていた記録が残っている。『守貞謾稿』には、干瓢やきくらげを細かく刻んで混ぜた飯を油揚げに詰める調理法が描かれており、黎明期から具入りのスタイルが根づいていたことが読み取れる。
家庭での手軽な作り方として、市販の「ちらし寿司の素」を活用する方法も広く定着している。1970年代後半以降に流通が広がったレトルトの具材セットを白飯に混ぜ、煮上げた油揚げに詰めるだけで五目いなりが手軽に完成する。行楽弁当やひな祭りをはじめとする特別な日の食卓にも登場し、家庭料理として長く愛されてきた。


