神経締め
【よみ】しんけいじめ
【English Name】Shinkeijime (spinal cord destruction)
活け締めには複数の段階があり、神経締めはそのなかでも鮮度維持の要となる処理だ。手鉤で頭部の急所を突いて魚を即座に脳死させ、続いて脊髄へワイヤーや専用針を通し、神経組織を物理的に壊すのがこの技法の本質である。
この工程の意義はATP(アデノシン三リン酸)の温存にある。魚の体内ではATPがイノシン酸へ分解される過程で旨味が生まれるが、死後に筋肉が暴れて痙攣を起こすとATPが浪費される。神経締めでこの消耗を断ち切れば、旨味成分の生成量を最大化できる。さらに血抜きを併せて行うと、内出血や微生物増殖の要因である血液を排除でき、鮮度低下を抑止する効果も得られる。乳酸をはじめとする疲労物質の蓄積も防げるため、味の劣化を最小限にとどめられる。
魚種ごとに施術の手順は異なり、ヒラメやマダイは目の後方の急所を突いて仕留める一方、マグロのような大型魚では延髄へ螺旋型の針を挿入し神経系を遮断する。この活け締め技術は江戸期の日本が起源とされ、2010年代に入ると和食の世界展開を背景に「ikejime」の名で国際的な認知を獲得した。寿司の現場ではネタの旨味と鮮度を極限まで高める基本技として欠かせない存在だ。


