蕪菁壽司
【讀音】かぶらすし
【英文名】Kabura sushi
冬の北陸が誇る発酵の味覚、かぶら寿司。なれずしの伝統を受け継ぐこの一品は、塩に漬けたかぶでブリを包み込み、米麹の層を介して乳酸菌の働きに委ねることで完成する。
加賀地方を擁する石川県がこの食品の本場として広く認知されており、旧加賀藩の版図に含まれた富山県西部の各所にも、冬場に仕込む慣わしが今日まで息づく。漬け込み作業が盛んになるのは11月に始まり翌年1月まで続く期間で、正月の膳を飾る品として欠くことができない存在だ。
かぶを切り分ける形状には地域差が見受けられ、石川県内は輪切りが標準的で、富山県側は半月やいちょうの形に整える傾向が強い。人参·昆布といった副材料をかぶの切れ目に忍ばせたうえ、米麹を幾層にも敷き詰めて重石を載せ、数日から最長2〜3週間ほど寝かせる。この過程で米のデンプンから糖分が生み出され、乳酸菌も盛んに繁殖するため、甘み·酸み·うま味が複雑に絡み合う風味へと育つ。古来の手法に従えば酢も砂糖も加えず、発酵の力のみで味わいを仕上げる点が大きな特色だ。
その起源は江戸期の金沢に遡る。1757年の文献には年賀客へ供する品として名前が確認でき、当初は高価な素材を必要とするため上流階層に限られた食べ物であった。1920年代に入ると家庭での自家製が浸透しはじめ、戦後は贈答需要の拡大と宅配便網の整備が相乗効果を生み、いまでは日本各地で味わえる冬の風物詩へと発展を遂げている。



