Inakazushi — Country-Style Sushi
【Reading】いなかずし
【English Name】Inaka-zushi (Country-style Vegetable Sushi)
高知県山間部に根付く郷土寿司、田舎ずし。「土佐田舎寿司」とも称され、魚介を用いず野菜·山菜を主役に据えた握りずしの一種だ。
高知県沿岸部では魚介を中心とした寿司文化が発展してきた一方、山間の集落では海苔や昆布の調達が容易ではなかった。そこで周囲に豊富な山の幸で寿司を作り始めたのが起源とされる。酢飯の要となるのは柚子酢をはじめとする柑橘系の酢で、田舎ずし固有の風味を醸し出している。
定番のネタにはリュウキュウ(ハスイモの茎)、ミョウガ、シイタケ、コンニャク、シホウチクの筍などが挙げられる。ミョウガの赤·リュウキュウの緑·シイタケの黒·筍の黄色が並ぶ色彩の豊かさも大きな魅力だ。シホウチクの空洞部分に酢飯を押し込んだり、コンニャクに深く切り込みを施して稲荷寿司のように仕上げたりと、地域ごとの工夫が随所に見られる。
「田舎ずし」という名が広く知られるようになった背景には1986年、食糧庁主催の「ふるさとの食·にっぽんの食百選」への出品がある。高知県葉山村(現·津野町)の久保川生活改善グループが山菜寿司を応募する際に命名し、百選入りを果たした。1990年にはロサンゼルスの物産フェアへも出品し、全国的な知名度を獲得するに至った。
動物性食材を一切含まない点から、ヴィーガン対応食品として近年脚光を浴びており、官民が連携した海外展開も検討されている。現在では高知県内のスーパーや日曜市の店頭に並び、県民の食生活に溶け込んだ日常の味となっている。


