曲物
【Reading】まげもの
【English Name】Magemono (Bent Woodware)
ヒノキやスギを薄く削いだ板材を帯状に整え、円形に曲げてカバやサクラの樹皮で綴じた木製容器、それが曲物だ。「まげもの」あるいは「わげもの」と読み、制作に従事する職人は曲物師という名称を持つ。
その起源は縄文時代に求められる。青森県八戸市の是川中居遺跡では、縄文晩期(約3,000年前)に作られたとみられる漆塗りの曲げ物が地中から発見された。さらに時代が下ると、平城宮跡(奈良)や出雲国府跡(島根)の井戸址において奈良時代の曲物容器の痕跡が見つかっており、平安・鎌倉期の絵画資料にも曲桶の姿が描かれている。こうした出土・文献の積み重ねは、この容器が長い年月にわたり人々の暮らしに溶け込んでいたことを示している。
寿司との関わりという観点では、盛り付けの器や持ち帰り用折箱として長年にわたり重宝されてきた。なかでも「曲げわっぱ」の弁当箱は広く親しまれており、木材が持つ調湿作用——余分な水分を吸い取り、乾燥すれば放出する性質——が酢飯のコンディションを保つうえで実用的な利点をもたらす。
現代においても各地で伝統工芸としての命脈は保たれており、秋田県大館市の大館曲げわっぱ、福岡の博多曲物、三重は尾鷲地方に伝わるわっぱ、長野・木曽奈良井の曲物などが代表例に数えられる。ただし、代替素材の普及と原材料確保の難しさが重なり、生産規模の縮小傾向は続いている。


