おいしそうに見える寿司の盛り付け方〜基本編
料理ではもちろん、味が大切ですが、見た目も大切な要素です。例えば、目隠しをして料理を食べると味がわかりにくくなることからわかるように、味覚は視覚に大きく影響を受けています。
私たちは料理を味わう時、色や形、配置といった見た目から、無意識のうちに味を想像しているのです。まったく同じ料理でも盛り付け方を変えれば、感じるおいしさや満足度は変わってきます。
そこで今回は、料理の盛り付け方の基本テクニックから寿司の盛り付け方まで、美しくおいしそうに見せる盛り付け方のポイントをご紹介します。盛り付け方をほんの少し工夫するだけで、自宅で作った料理をプロ並みの見栄えにできますよ。
料理を美しく見せる盛り付け方の基本
美しく見える料理には共通点があります。飲食店で料理が運ばれてきた時、「盛り付けがきれいだな」と感じた経験はありませんか?
おいしそうに盛り付けるためのポイントは、「色」「余白」「高さ」の3つです。
それぞれのポイントを説明していきましょう。
Point.1 料理に合わせて器の「色」を上手に選ぶ
1つめのポイントは、料理の色と器の色が同系色にならないようにすること。料理の色と補色の関係にある色(反対色)の器を使うと、お互いの色の鮮やかさが強調しあうため料理がより引き立ちます。
例えば、赤と緑、黄と青紫は、それぞれ補色の関係にあります。つまり、赤いトマトを緑色の器に、黄色い卵焼きを青い器に合わせると、おいしく見えやすくなります。
Point.2 器に適度な「余白」を残して料理を盛り付ける
2つめのポイントは、器の大きさに対して料理を盛りすぎないこと。目安として、器全体の3割以上は余白として残すようにすると、美しく見えるといわれています。
余白が多いと料理に視線が集まりやすくなり、高級感や特別感があるように見えます。盛り付けたい料理の量が決まっている場合は、空ける余白を考慮したサイズの器を選びましょう。
Point.3「高さ」を出して料理を立体的に見せる
3つめのポイントは、盛り付けに高さを出すこと。器にのせる料理の高さがすべて同じだと、見た目が平面的で地味になりがちです。
ある程度の高低差をつけることで料理が立体的に見え、シンプルな料理でも豪華な雰囲気を出すことができます。
Point.4「差し色」を使う
4つめのポイントは、差し色として緑や青を使うこと。
寿司は、マグロやサーモン、エビやいくらなど、赤い色味のネタや白身などの色がない寿司ネタが多いですよね。そのため、赤の反対色である緑や青をポイントに使うと、色相に幅が出ておいしそうに見えます。
お造りに添えられている青じそや大葉は、刺身を引き立たせる差し色の役割を担っているといえます。白地に緑や青で模様が描かれた器を使うのも素敵です。
定番の盛り付け方「流し盛り」と「放射盛り」
和食にはさまざまな盛り付けの手法がありますが、寿司で定番なのは「流し盛り」と「放射盛り」。
握り寿司のように形や大きさが似ているものを複数盛り付ける時は、「流し盛り」が最も基本的。「流し盛り」は、器に対して寿司をまっすぐに並べるのではなく、少し傾けて斜めに盛り付ける方法です。
一方「放射盛り」は、器の中心から放射状に料理を並べていく盛り付け方。寿司を桶に並べる時によく使われます。
流し盛り
流し盛りでは、左上から右下へと流れるように料理を盛り付けます。器は角皿でも丸皿でもOKですが、角皿のほうがバランスよくまとまります。寿司は真上から見て反時計回りに少し傾け、右斜め下に向くように器に置くのが基本です。
隣の寿司とぴったりくっつかないように間隔を空け、すべて同じ方向にそろえて器に並べましょう。そうすると、ほどよい余白が生まれるだけでなく、右利きの人が箸で寿司を持ち上げやすくなります。
また、ネタは好きな順番に並べてもかまいませんが、似た色合いのネタが並ばないようにするのがおすすめ。赤身の次は白身、ところどころに黄色っぽいウニや卵焼き、というように交互に並べていくと、見た目が彩りよく仕上がります。
ちなみに、寿司店で提供されるような寿司げたにのった寿司は、左上から右上、左下から右下に向かって食べ進めるのがとよいとされています。
それは、味わいが淡白なものから濃いものまで、ひとつひとつのネタを最もおいしく味わえる順番を職人さんが考えて寿司を並べているから。そういった点も意識して寿司を並べてみると良いでしょう。
放射盛り
放射盛りは、円形の器を使う時に適しています。正面がなく上下左右が対称になるので、どの角度からも豪華に見えるのが特徴です。
まずは器の中心に寿司をのせましょう。かっぱ巻きやかんぴょう巻きなどの巻き物やウニやいくらなどの軍艦巻きをいくつか並べて花びらのような形にすると華やかです。
次に、器の真上から目視で十字線を引き、器の端と交わる4箇所に寿司を置きましょう。そして、中心から外側に向かって、器の余白を埋めるように放射状に寿司を配置していきます。
放射盛りは、流し盛りに比べると寿司と寿司との間隔が狭くなります。しかし、ぎっしりと寿司を詰めすぎると箸を入れにくくなるため、少しだけ隙間を空けるとよいでしょう。
バラン(緑色の葉を模したプラスチックの装飾品)を使って間仕切りをするのもありです。寿司同士がくっつくのを防ぎ、彩りも加わります。
上級者向けの盛り付け方「散らし盛り」
上級者向けの盛り方のひとつに「散らし盛り」があります。器をキャンバスのように考え、寿司一つ一つの間の余白を取り、器に散らばるように盛り付ける方法です。
寿司の場合は、流し盛りの余白をより広くとるようなイメージで並べましょう。ひとつひとつの寿司が際立って見えるので、特別感がアップします。
絵を描くような感覚で行うと良いでしょう。
ワンポイント:添え物で立体感をプラス
寿司は大きさや形が似ているので、盛り付けに高低差を出しにくいかもしれません。そんな時は、寿司ネタに飾りを添えて立体感を加えてみてください。
例えば、寿司の上に刻んだ小ネギを散らすだけで、ぐっとおしゃれになります。白身のネタには薄切りにしたすだちを合わせると、洗練された見た目になるだけでなく、さっぱりと味わえるのでおすすめです。
盛り付け方の工夫で寿司をもっとおいしく味わおう
寿司は特別な日のごちそうとして登場することが多い料理。ここで紹介した方法以外にも様々な盛り付け方があります。
なんとなく器に並べるのではなく、見栄えを考えながらバランスよく配置することで、より豪華さが増し、ますますおいしく味わうことができます。
センスよく美しく盛り付けた寿司とともに、食事のひとときを楽しんでくださいね。