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寿司の基礎知識③光り物

あじ寿司

光り物は、多くの人から愛されている寿司ネタのひとつです。ネタによって淡泊な味のものから脂が乗った濃厚なものまでさまざま。

今回は寿司の光り物について徹底解説していきます。光り物の知識を深めることで、今まで以上に寿司を楽しめるようになりますよ。

光り物とは

光り物は寿司業界特有の呼び名で、その名のとおり表面の皮が光る魚をさします。

光り物は身を酢や塩で締めてから握り、生とは異なる食感や香り、味を楽しめるところに特徴があります。酢や塩で締めて味わいに工夫を凝らすのは江戸時代から続いている江戸前寿司の華と言えます。

では、光り物の魚の皮はなぜ光るのでしょう?
光り物の魚の皮が光るのはグアニンという成分のためで、グアニンは鱗(うろこ)についている色素細胞のなかに小さい結晶板のかたちで存在しています。色素ではありませんが、グアニンの結晶板が光を反射するため、光り物は光って見えるのです。
寿司のネタが光ることから名づけられた光り物は、江戸前寿司らしい洒落た表現ですね。

ちなみに、光り物と青魚は混同されがちですが、青魚は光沢のある青みがかった魚を指す呼び名で、釣り業界や市場などで用いられる言葉です。青魚はあくまで外観による便宜上の分類で、赤身魚、白身魚のような水産学上の定義とは異なる実用語。同じ光沢のある魚を指す言葉でも、寿司業界特有の光り物とも違った呼び名なのです。

光り物の味わい方

光り物の魚は足が速く(鮮度が落ちやすいこと)、江戸時代では寿司ネタを生の状態で乗せるのではなく、ひと手間加えて握っていました。現代と同様、当時から小肌などの光り物は酢締めにすることが多く、一方、キスやサヨリなどのネタによっては昆布締めにしていたようです。

酢締めは、内臓などを処理して開いた魚に塩を振り、しばらく置いてから酢に漬け込む調理法です。酢に漬けすぎてしまうと、魚の身が崩れたり、色味や皮目の輝きが損なわれてしまったり、水分が抜けすぎると身がパサついたりしてしまうため、繊細な技術が必要とされます。酢と塩の微妙なさじ加減には目利きと技が求められるため、光り物の寿司でその職人の技量が分かるとまで言われているほどです。

昆布締めは、内臓などを処理して開いた魚に塩を振り、数十分置いてから2枚の昆布で挟み込んだものです。昆布で魚の身を包むことで余分な水分を吸収させ、日持ちするようにしていました。
酢締めや昆布締めにするのは、鮮度を保ち、ネタの旨みを引き出すためだけではなく、江戸前寿司の技術を伝承する文化的な側面もあるのです。

寿司ネタで人気の光り物ネタ

光り物にはさまざまな種類の魚があり、代表的なものと言えばコハダやサバ、アジ、サンマ、イワシ、キス、サヨリがあげられます。
その中でも人気のある寿司ネタをご紹介します。光り物の特徴を押さえて寿司屋で注文する際の参考にしてみてくださいね。

サバ

光り物の代表的な魚と言えば、古くから大衆魚として親しまれているサバが筆頭にあげられます。種類によって異なりますが、11月~2月と6月~9月が旬。

サバは鮮度が落ちやすいので、基本的に寿司ネタとしては酢締めにされることが多いのですが、九州などの一部の地域では締めずに生のまま食べることもあるようです。

酢締めにしたサバは、シャリとの相性が抜群。江戸前寿司の代表格と言っても良いでしょう。凝縮した旨味やほんのり甘味のある脂、酢の爽やかな酸味が絡み合った深い味わいは幅広い客層に人気があります。

コハダ

江戸前寿司の象徴的な光り物として知られているのが小肌。出世魚で、稚魚のシンコは夏の風物詩とも言える最高級の寿司ネタとして有名ですね。シンコの旬は6月~8月までと短く、小肌9月~12月の秋から冬にかけてです。

身が柔らかいシンコは酢締めにより繊細な香りが醸し出され、格別な味わいに。

脂がたっぷり乗った小肌は、酢と塩で締めることで、特有の旨さや風味が引き出されます。シンプルに握る以外に、飾り包丁を入れて華やかな見た目や違った食感を楽しむことも。関西では甘酢に漬けこんで握り、関東とは異なった風味を味わえますよ。

アジ

人気の光り物として、昔から親しまれているアジ。獲れる地域や種類によっても多少異なりますが、旬を迎えるのは4月~8月とされています。

天然物は、サッパリとした味わいながらも程良く脂が乗っています。また、プリっとした歯ごたえと香りも楽しめるのが特徴。養殖物は、旨味や甘味が強く、脂が乗っていて濃厚です。

軽く焙って食すこともありますが、いずれも握り寿司の際は生のまま握り、生姜や小葱などの薬味を乗せたり、食べる際に生姜醤油につけたりすることが多いです。アジ特有の臭みが消え、より美味しくいただけます。生で食べるのは現代になってからで、古くは酢締めで食べるのが一般的だったようです。

キス

キスは、産卵期を迎える6月から9月までの間が最も脂が乗り、美味しい食べごろを迎えます。ほんのりとした甘みと気品溢れる香りを感じられるのが特徴です。

旨味成分であるグルタミン酸やリジンを多く含んでいて大変美味しいうえに、淡泊な味わいなのでどんな料理にでも合う万能選手。身に含まれる水分量が約80%と多く、そのまま生で食すと水っぽく感じられるため、昆布締めや軽く塩を振って脱水したものを寿司ネタとして用います。

食べる直前にすだちをかけてサッパリといただいたり、塩をつけてさらに甘みを引き出して食べることが多いようですね。

サヨリ

サヨリは、光り物の中でも高級魚とされている魚のひとつです。
旬は、産卵を迎える3月から5月までと、脂が乗る11月から3月までと幅広く、独特の食感と品のある味わいが人気を呼んでいます。

寿司ネタとしては、昔はサバや小肌と同様に酢締めにしていました。現代では手を加えずに、すりおろしたショウガと薬味の小ネギを乗せたり、シャリとサヨリの間に紫蘇を挟んだりして生で食すことも多いようです。

また、透きとおった美しい身を活かすために飾り切りにする場合もあり、味わいだけでなく、見た目においても楽しめる寿司ネタです。

まとめ

今回は、光り物の特徴をはじめ、青魚との違いや人気の寿司ネタをご紹介しました。
光り物の魚は足が速いため、鮮度が落ちないように江戸時代からあらゆる工夫を凝らしてきたのですね。

酢締めにされることが多いです光り物ですが、酢締めは繊細な技術が問われる、まさに職人のなせる技です。江戸前寿司の伝統を継承する酢締めは、職人の腕のほどが表れる技術であり、光り物は多くの寿司ネタの中でもその店のレベルが問われる重要な寿司ネタと言えるでしょう。

寿司屋で寿司を食べる際に光り物に着目して味わってみたり、店ごとに食べ比べてみたりすると、普段とはまた違った視点で寿司を楽しむことができるかもしれませんね。