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寿司の基礎知識②白身

鯛寿司

白身はマグロと同じくらい人気がある寿司ネタです。赤身のような比較的はっきりした味わいというよりは、淡白さや上品な旨みが特徴ですが、なかには脂がのったものもあり、寿司通にも好まれやすい寿司ネタです。

ひとくちに白身と言っても、色々な白身があります。今回はそんな白身魚の魅力についてご紹介します。白身の魅力を知ることで寿司の世界を広げ、より寿司を楽しめるようにしましょう!

なぜ魚の身の色が違うのか

なぜ魚の身の色が違うのか

寿司の世界では魚の身の色から「赤身」「白身」「光物」と寿司ネタを分類しています。赤身で代表的なものがマグロ、白身ではタイやヒラメ、光り物はコハダなどがあげられます。

では、そもそも白身の魚はなぜ身が白いのでしょうか?

魚の身の色に違いが出るのは、筋肉の種類と血液の中にあるタンパク質に原因があります。魚の筋肉を構成する筋繊維は遅筋と早筋の2種類あり、遅筋は「赤筋」、速筋は「白筋」と呼ばれています。

赤筋は長時間に渡って活発に動かせる持久力がある筋肉で、広い海の中を泳ぎ回っているマグロやカツオなどの回遊魚が赤筋を持った魚です。魚も人間と同じように運動するには酸素を必要とします。赤筋には血液の中に酸素を効率よく供給する色素タンパク質「ヘモグロビン」と酸素を蓄える「ミオグロビン」を多く含み、ヘモグロビン、ミオグロビンの色素が赤いため、魚の身も赤くなっているのです。

一方、白筋を持った魚は、回遊魚のように常に泳ぎ回っている魚ではなく、普段は海底に潜んでいたりして、獲物を捕獲する時だけ敏速に動きます。

この瞬発力を持った筋肉が白筋で、回遊魚のように筋肉を動かすのに酸素を多く使わないため、ミオグロビンが少なく、必然的に色素タンパク質もほとんどないため、白っぽい身になっています。

白身と赤身の分類

白身と赤身の分類

魚の身の色が筋肉に含まれる酸素を運んだり貯蓄したりする色素タンパク質によって変わることは先ほど述べたとおりですが、水産学では色素タンパク質の含有量で「白身魚」と「赤身魚」を分類しています。

色素タンパク質のヘモグロビン、ミオグロビンが100gにつき10 mg以上含まれているのが「赤身魚」。10 mg未満を「白身魚」として分類しています。

水産学上の定義から言えば、実はブリは赤身ということになります。ブリは寿司ネタではとかく白身として扱われがちですが、マグロと同じ回遊魚。色素タンパク質も他の白身魚より多いのです。

面白いのは、ブリはマグロやカツオと違って瞬発力もあり、赤筋(遅筋)と白筋(速筋)を兼ね備えたちょっと変わった魚でもあるのです。

サーモンは白身魚

サーモンは白身魚

白身魚と間違われやすいブリとは逆に、赤身魚とよく間違えられる魚にサーモンがいます。赤みがかったオレンジ色の身をしているため、サーモンが白身と聞いて驚く人もいるかもしれませんが、実はサーモンは白身魚。

なぜ、身の色が赤くなるかと言うと、サーモンが餌としている甲殻類(小さいエビやカニ、プランクトン)に原因があります。甲殻類はヘマトコッカス藻類を主食とし、この藻の中にアスタキサンチン色素が含有されているため、サーモンの身が赤くなるのです。

サーモンの卵であるイクラが赤いのも同じ理由です。養殖されたサーモンにアスタキサンチンを与えないようにすると、白っぽいサーモンになります。

青魚は身が青い?

青魚は身が青い?

サンマやアジ、イワシなど一般的に青魚と呼ばれている魚がいますね。余談ですが、青魚は赤身魚や白身魚のように身の色で分類されているのではなく、背の色で分類されます。

光沢のある青みがかった背によって区別されているものの、この区別は外観による便宜上の分類で、赤身、白身のような水産学上の定義ではなく、あくまで実用として使われる概念です。

青魚はEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)を含有し血液中の悪玉コレステロールを減らす効果がありますが、酸敗して鮮度が落やすくなっています。

寿司における白身魚

寿司における白身魚

それでは、寿司ネタで扱われる白身魚はどんな魚がいるのでしょう?
代表的なのはタイ、ヒラメ、サーモン、スズキ、イサキ、カワハギ、アナゴがあげられます。

タイとヒラメは、「春のタイ」「冬のヒラメ」と言われるほど、寿司ネタの王様とも言える白身魚。サーモンは淡白な味が多い白身の中でも脂がのった濃厚な味わいで秋に旬を迎え、スズキとイサキ、アナゴは夏が旨さの最盛期になります。

季節ごとにどんな白身の寿司ネタがあるのか、代表的なものをご紹介します。

 

鯛(タイ)

白身で最も好まれているタイ。日本人は古くからタイを高級魚として扱ってきました。特に春に鳴門海峡から瀬戸内海へ入ってくるタイは「桜鯛」と言われる高級魚。
タイは白身魚の中でもひと際透明感があります。モチっとした食感とほどよい脂は他の白身にはない独特な甘さを楽しめます。
11月から5月にかけて、産卵の時期に合わせて餌をたっぷり食べたタイは身が琥珀色に輝き、美味しさの最盛期にあります。

寿司ネタにするには、基本的に皮引きをしてから握りますが、皮目を残して湯引きや炙りにしてから握ると、ほどよい皮の食感も味わえます。塩で深い旨みをだしたり、昆布締めにして握った寿司は白身ならではの爽やかな味わいを楽しめ人気を呼んでいます。

 

穴子アナゴ

初夏から夏にかけて旬のアナゴ。アナゴは白身魚の中でも特にふっくらとした柔らかな身が特徴的で、口の中でとろけるような食感が多くのファンを惹きつけています。

初夏の梅雨時は一年中でアナゴが最も美味しい時期。煮てから握るアナゴは長い間江戸前寿司の伝統的な手法で握られてきました。煮る方法は店によって異なり、職人の腕の見せどころになります。 

煮汁を使った甘辛い煮ツメを塗るのが江戸時代からの手法ですが、塩や柑橘をのせて食べたりもします。

 

【秋】皮剝(カワハギ)

白身の寿司ネタの中でも、特に通好みの魚として知られるのがカワハギ。
本州から九州の浅い砂地に生息しており、獲れる量はさほど多くありません。
以前は全国的に高値のつく魚でしたが、今では養殖が盛んに行われていて、天然もので大きいものになると高級魚となる場合もあります。

9月から12月にかけて肝が肥大したカワハギは身が厚くなって食べ頃になります。フグのような弾力ある食感が楽しめ、淡白ながらも奥深い上品な味わいです。

カワハギの魅力は何といっても肝の旨さを活かした握り寿司。肝をポン酢で和え、薄く切った身に山葵をきかせて握り、その上に和えた肝をのせます。旨み溢れる肝と淡白な身が絶妙に絡み合う味わいは白身魚の醍醐味と言えますね。

 

【冬】鮃(ヒラメ)

タイと同じく白身のネタとして人気が高いヒラメ。

ヒラメには寒ビラメという言葉があり、寒い冬場に脂がのり、身肉が締まって食べ頃になります。
一方、3月以降の産卵期にはいると、ぐっと味が落ちてしまい、旬は10月から2月にかけて。「3月のヒラメは犬でも食べない」と言われるほどです。

ヒラメは全体的にしっとりした脂がのり、白身魚特有のきめ細かな淡白な味わいの中にほのかな脂の甘みが感じられるのが特徴。鍛えられた筋肉の甘みは白身魚ならではのものと言えますね。

ヒレにある四本の筋肉は「エンガワ」と呼ばれる希少な寿司ネタです。コリっとした食感で噛むほどにじわりと滲みでる脂の旨みを楽しめます。

まとめ

今回は寿司ネタの王道「赤身」と並ぶ「白身」について紹介しました。
白身のネタにはヒラメやカワハギのような淡白な味わいのものだけでなく、サーモンのような濃厚な旨みを楽しめる魚がいることもわかりましたね。

透き通った爽やかな色合いの白身は、低カロリーながらも、淡白な味わいの中に上品な旨みがあり、もっちりした独特な食感を楽しめます。
普段赤身を中心に食べている方も、寿司屋を訪れる際は、白身の寿司ネタに注目してみてください。いつもと違った新しい寿司の楽しみ方を発見できるかもしれません。