回転寿司の歴史は半世紀超!回転寿司チェーン、それぞれの特徴は?
外食産業の中でも特に元気な業界、それが回転寿司です。
気がつけばご近所に回転寿司のお店が次々開店していた、なんて方も多いのではないでしょうか。
いったい回転寿司はいつごろから隆盛を見せ始めたのでしょうか。
回転寿司の発祥から、大手チェーンの特徴や魅力について解説します。
大阪が発祥!商人の町に生まれた回転寿司
リーズナブルな値段、家族連れで楽しめる雰囲気。
回転寿司店が人気の理由は、いくつもあります。もはや日常に馴染んでいる回転寿司店ですが、このアイデアはいったいどこから生まれたのでしょうか。
回転寿司が考案されたのはなんと1948年、戦後間もない頃でした。
現在も健在の回転寿司チェーン「元気寿司(当時は元禄寿司)」の創始者、白石義明氏が、ビール工場のベルトコンベアから着想を得たものです。
紆余曲折を経て実際に回転寿司が登場したのは、それから10年ほどたった1958年のことでした。
東大阪市に誕生した1号店は、値段の安さや価格の明快さが商人の町大阪の人々の心をとらえることに。
そのコンセプトが、その後の発展につながったといわれています。
そう、回転寿司の歴史は実に半世紀以上の歴史を持っているのです。
現在もこの回転寿司1号店の前には石碑が立ち、その偉業を伝えています。
大阪万博を機に人気爆発!回転寿司の変遷
元禄寿司はその後、1962年に「コンベア旋回式食事台」という名で回転寿司の特許を取得、1970年に大阪で開催された万国博覧会でさらに脚光を浴びるチャンスを得ます。
万博に参加出店した元禄寿司は、食事優秀賞を獲得。
1959年にすでに、フランチャイズ1号店を宮城県仙台市にオープンしていた元禄寿司、これを機に全国レベルで注目されるようになりました。
元禄寿司が祖となった回転寿司はその後、元禄寿司のベルトコンベアの特許が切れるとともに、数多くのチェーン店が誕生し、それに伴って技術面でも大きく進化していきます。
自動給茶装置、すしロボットなどが開発され、2021年には回転寿司はついに7000億円市場へと成長を遂げたのです。
ずばり、回転寿司と普通の寿司店との違いはなに?
お寿司を食べるといえばもっぱら回転寿司のみ、という方も多いかもしれません。
回転寿司はそのくらい店舗数が多く、ごく気軽に入店できるのがメリットです。
それでは、回転寿司と普通の寿司店とはどんな違いがあるのでしょうか。2つのカテゴリーの相違を解説します。
価格
まずは言わずもがな、価格が一番大きな違いとなります。グルメ回転寿司など高価格帯の回転寿司もありますが、いわゆる回らない寿司屋と比較すると、回転寿司店は基本的に一皿の価格が決まっており、一般的にリーズナブルな値段で寿司が提供されます。
一方、普通の寿司店はネタの供給状況や仕入れ値によって価格そのものが変わる可能性があり、一般的に品質は回転寿司を上回りますが、価格は当然回転寿司よりも高額になります。
店構え
回転寿司も多様化し、現在は回らない形態をとる店も存在します。
しかし主流は、なんといっても寿司が回るレーンが主役のスタイルではないでしょうか。ベルトコンベア型のレーンを中心に、テーブル席が設置されているのがスタンダードなスタイルです。
お茶やお箸はセルフサービスというケースが多く、食器等も顧客自身が取って利用することが多いことから、割れにくいものを使用していることも多いです。
回らない寿司屋の場合はネタが見えるカウンター席があり、通常は板前が目の前で寿司を握ります。おまかせコースなどを提供する価格帯が高めのお店では、寿司はもちろん、一品物やお茶、デザート、食器などの品質にもこだわるケースも多くあります。
入店の目的
回転寿司店は、小さな子供も一緒に入店できるカジュアル感が魅力的。
気心知れた家族や友人と、あるいは1人で気兼ねせずに寿司を楽しむのが主な目的です。
回らない寿司屋の場合は、友人や大事な人とのプライベートな食事、親族との改まった席などで活用されたりすることが多く、価格帯が低いチェーン店以外では家族で利用されるケースは少ない傾向にあります。
人気回転寿司チェーン、歴史と特徴
みなさんのお住まいの近くには、どんな回転寿司店があるでしょうか。
馴染みの回転寿司店、入店したことはないけれど気になる回転寿司店。
回転寿司のチェーン店はとてもたくさんあり、それぞれ特徴や魅力を有しています。
また、提供するスタイルも大きく分けると、職人が握って提供する昔ながらの職人系回転寿司とロボットが握った寿司を提供するロボット系回転寿司の2種類があります。
ここでは有名な回転寿司チェーンを、職人系回転寿司とロボット系回転寿司の2つに分けて紹介します。
職人系回転寿司
金沢まいもん寿司
回転寿司最大の激戦区と言われる金沢市でトップの売上を記録する本格派の回転寿司。
金沢という名前になっていますが、金沢だけでなく東京や大阪、京都など20店舗近くを出店しており、台湾の台北にもお店があります。
自分の家族や友達にも食べさせたいものしか出さないと謳ってるとおり、鮮魚だけでなく、調味料や米、海苔など、細部までとことんこだわっており、大手回転寿司大手チェーンが経営効率を高めるために寿司ロボットを導入してるのに対し、新鮮な魚を使って職人が握る本来の寿司職人スタイルを貫いています。
舌の肥えた金沢人だけでなく、寿司好きを中心に強く支持されている回転寿司です。
がってん寿司
「がってん寿司」は元禄寿司のフランチャイズから独立して今や100店舗近い回転寿司チェーンで、板前が握って出す大手回転寿司チェーンの中でも特に知られた存在です。
職人が目の前で握って出す、いわゆる回らないお寿司のクオリティーをリーズナブルに提供するグルメ回転寿司であることにこだわっていますが、国内に64店、海外に34店と海外比率が大きいのも特徴の一つです。
最近ではロボットがつくった寿司を提供する店舗もありますが、手の届く贅沢を追求しているという「がってん寿司」は多くの寿司好きに支持されています。
元禄寿司
回転寿司の元祖として知られているのが「元禄寿司」。
回転寿司のコンベアは「元禄寿司」の白石義明氏によって発明され、特許も取得されたため、昔は回転寿司といえば「元禄寿司」しかありませんでした。
その後、特許が切れるとともに全国に様々な回転寿司が広がり、さらに、傘下のフランチャイズ店が独立して、元気寿司や平禄寿司、にぎり長次郎などのチェーン店が誕生していきました。
現在は大阪を中心に10店舗程度のチェーン店となっていますが、今も昔ながらの職人スタイルの回転寿司形態で営業しており、まさに、回転寿司の父ともいえる回転寿司チェーンです。
にぎり長次郎
「にぎり長次郎」は関西を中心に六十店舗あまりを展開する職人系の回転寿司で、東京にも数店舗あるほか宅配寿司も行っています。
回転寿司でありながら、回らないカウンターの寿司屋にも引けをとらないクオリティを提供すると公式HPに記しているだけあって、値段は高めでもコスパが良いと寿司好きから高い評価を得ています。
店内に水槽がある店舗もあり、寿司ネタによっては値段がそこそこするものもありますが、おいしい寿司を食べたいけど、ロボット系回転寿司はちょっと、、でも高級店は高いというときにおすすめの回転寿司です。
回転寿司みさき
「回転寿司 みさき」は、主に都内の駅前などに出店しており、職人が目の前で寿司を握る店舗とロボットが寿司を作る店舗があります。
運営元の「京樽」は、「スシロー」を展開するFOOD&LIFE COMPANIESの子会社。ロボット系のスシローとは一線を画すグルメ系回転寿司です。
みさきの名物は、世界中から厳選して仕入れた上質なまぐろです。中とろや大とろ、赤身だけでなく、はがしやちから身といった天然まぐろの希少部位も期間限定で提供しています。
ほかにも、豊洲市場から仕入れた旬の魚介や熟成赤酢を配合したこだわりの赤シャリなどをリーズナブルな価格で堪能できます。
職人系の店舗では職人とコミュニケーションをとりながらの注文も可能。職人による店内調理にこだわり、スシローにはできない回転寿司を目指しています。
回し寿司活
関東に7店舗展開している「回し寿司 活」は、約200種類もの新鮮なネタを用意し、厳選した素材を職人が握ります。
おすすめは、看板メニューの「一本穴子付け」。独自の製法で作られ、小骨までやわらかく煮た穴子は口当たりがよく、絶妙な旨味と食感を味わえる逸品です。豪快な一本の穴子にたっぷりかかったタレが食欲をそそります。
また、仕入れたネタを基に職人たちが考案し、毎日限定で提供されるたオリジナルのメニューも魅力的です。
おすすめの商品や握りたてのお寿司をお知らせする際は、職人によるマイクパフォーマンスが場を盛り上げます。
大起水産
「大起水産」は、塩干物の卸販売会社として大阪で誕生しました。
大阪を中心に約45店舗を展開しており、鮮度にこだわった捌きたての魚を目の前で握ってくれる職人系の回転寿司です。
鳥取県の境港を中心とする産地直送の流通システムで魚介を仕入れ、高品質なネタを数多く取り揃えて低価格で提供しています。
大起水産の自慢の一品は、鮮度抜群の「本まぐろ」。カマトロやほほ肉といった希少部位を堪能できるのは、高い養殖技術をもつ世界中の市場から入荷したマグロを1本まるごと解体し、提供しているからです。
また定番のネタだけでなく、珍しい天然の魚も味わうことができます。
ロボット系回転寿司
スシロー
日本国内で650店以上を展開する回転寿司業界のトップ、スシロー(2023年3月)。
1984年、大阪府豊中市に1号店をオープンしたスシローは、21世紀に入ってから関東や中部地方にも進出し、全国展開を遂げました。
2011年以降は海外にも積極的に出店しており、2022年12月には海外店は100店舗を超え、さらに2030年までに200店舗を目指して快進撃を続けています。
スシローの寿司は寿司ロボットによって作られており、中には250万円もするロボットがあり、寿司を握っているのだとか。デザートの充実ぶりから、子供や女性にも高い人気を誇っています。高額な投資や顧客を意識したメニュー開発などによって顧客の満足感を得ていることも、業界第1位を獲得している理由かもしれません。
くら寿司
家族連れに焦点を合わせて、子供のためのサービスが充実しているのが、スシローと同じくロボット系回転寿司の雄「くら寿司」です。
くら寿司は1977年に堺市で創業、回転寿司店としては珍しいボックス席などを開発し、回転寿司の新たな概念を構築してきました。
くら寿司はしゃりを握るロボットだけではなく、時代に即した非接触化のために高度なテクノロジーを次々と導入していることでも有名です。
また、2000年に導入した「ビッくらポン!」は、食べ終えたお皿を投入することでゲームができるという斬新な企画で、子どもたちに絶大な人気を誇っています。
子供たちのためにくら寿司の寿司はわさび抜きが基本。
わさびを直前に加えられる「直前わさび」も、利便性と鮮度の両面で高く評価されています。
かっぱ寿司
価格の点で他をしのぐといわれるのがかっぱ寿司です。
食べ放題をうたった「食べホー」の企画を始め、低価格に抑えたサイドメニューも人気の要因となっています。
かっぱ寿司ではしゃりを握るロボットだけではなく、配膳や運搬用のロボットが登場したことでも話題になりました。
1973年に創業したかっぱ寿司は、近年は出張の回転寿司サービスも開始。
価格面だけの長所に頼らず、柔軟なサービスを次々に打ち出しています。
はま寿司
業界第2位の店舗数を誇るはま寿司は、接客用ロボットやアプリの活用など、テクノロジーの面での充実が特徴です。
栃木県足利市に1号店をオープンしたはま寿司の創業は2002年。
若い会社のため独自のアイデアの実践が素晴らしく、業界初のドライブスルーシステムの導入、アプリの活用による待ち時間の軽減など、お客さんには嬉しい特徴がたくさんあります。
オリジナルの醤油の開発などにもこだわっており、近年は、マグロやサーモンが乗ったお持ち帰り用のワンコイン丼が人気があります。
魚べい
寿司の業界で「魚べい」「元気寿司」「千両」を展開する元気寿司。
回転寿司の祖「元禄寿司」が母体となっている同企業、主戦力となっているのが、「魚べい」です。
同店の強みは、なんといっても乗り物が寿司を運んできてくれる「トリプルスマイルレーン」。
そう、魚べいは厳密には回転しない寿司ながらリーズナブルな値段に加えてエンターテインメント要素で、人気を得たのです。
乗り物好きの子どもだけにとどまらず、大人にもワクワク感を与えてくれるこのサービスで、魚べいは回転寿司店の中でも知られた存在です。
回転寿司としては珍しくフルオーダーシステムであるため、食品ロス問題にも貢献している点も高く評価されています。
回転寿司業界の今後に期待!
「寿司=高級」というイメージに挑戦し、リーズナブルな大衆寿司として、新たなカテゴリーを生み出した回転寿司。
リーズナブルな価格や家族で来店する顧客へのさまざまなサービスが人気となり、現在では市場規模が7000億円を超えるなど、外食業界において大きな存在となっています。
営業の効率化も進み、今は昔ながらの職人が提供する回転寿司だけでなく、ロボット系回転寿司も大きな存在感を放っています。
ロボットで作られた寿司は寿司好きから見るとクオリティが高くなく賛否両論ありますが、回転寿司業界の活況の一翼を担う存在であるのは間違いないでしょう。
江戸時代は大衆フードとして知られた寿司。
回転寿司はそうした寿司を本来のある姿に戻しているという意味で大きな存在です。
今後はどう発展し変化していくのか、大いに気になるところですね。